医療のIT化の筆頭である電子カルテ

医療のIT化で最もわかりやすいのは、電子カルテだろう。電子カルテの使用により、紙カルテのときよりも業務効率がよくなり、患者の待ち時間の短縮や各診療科での情報共有、医療品のオーダーがスムーズにできるといったメリットがあるのだ。また紙カルテでは文字の判別ができず、間違った薬剤を投与するミスも起こりうるが、電子カルテではそのような人為的ミスが減少する。さらに血液検査の結果や、CTおよびMRIなどの画像データをリンクさせることも可能だ。そのため、診断にかかる時間が削減でき、患者の取り違えミスもなくなる。これまでは紙カルテの長期保存に莫大な手間と場所を要していたが、電子カルテはサーバーに保存されるためそれらの問題も解決できるだろう。紙カルテの紛失や盗難といったリスクも、電子カルテによって回避できる。

一方、電子カルテのデメリットが全くないというわけでもなく、まだ導入率が低いのが現状だろう。それはシステムの導入費用が高すぎることが原因であり、導入にはクリニックなら数百万円、大規模な病院では数億円から数十億円かかるといわれている。加えて、全てのスタッフがシステムを理解し、問題なく使用できるようになるための費用と時間も必要だ。コンピュータウィルスや不正アクセスによる患者情報の漏洩問題も無視できない。停電になると一切利用できない、災害時などに機能しないなどにより、医療機関自体がパニックに陥る危険性も考えられるだろう。これらのデメリットを解決する方策が求められている。